イマームの転落
草思社
鳥居 千代香 訳
イマーム(イスラム教徒の宗教的指導者)は権力の頂点にいる。彼をとりまく与党の指導者、反対党の指導者、大作家、秘密警察、正妻たち。彼らに対峙するのが私生児の娘ビント・アッラーである。法的に認められていない罪の子供ビント・アッラーは男たちの支配体制を脅かすがゆえにその存在を抹殺される。ほかに象徴的な登場人物をめぐって物語はくりひろげられイスラム社会の不条理を浮き彫りにしていく。アラブ世界の核心を深い洞察力でとらえ、宗教を利用する権力者たちの偽善と欺瞞、圧倒的な男性優位であるイスラム社会の不条理を浮き彫りにする。この原書を出版してから、サーダウィは身の危険を感じるようになったという。1992年8月までエジプトで護衛つきの生活をしていたが、イタリアに旅立ち、イギリス、スイス、アメリカなど各地を転々とするようになった。(1993年出版)