0(ゼロ)度の女 死刑囚フィルダス
三一書房
鳥居 千代香 訳
本書はアラブ社会を代表するエジプト人作家ナワル・エル・サーダウィ(Dr. Nawal El Saadawi)の代表作。ノーベル文学賞にもノミネートされてきたが、2021年3月21日に89歳で亡くなられた。原書はレバノンのベイルートで1978年にアラビア語で(彼女は著書のすべてをアラビア語で書いている)、1982年にフランス語で出版され、フランス・アラブ友好文学賞を受賞。本書は英語からの翻訳である。カイロ大学医学部を卒業し医者になり、米コロンビア大学に留学し精神医学の学位を取得した。70年代当時、精神科医としてエジプト女性のノイローゼについて研究をしていて、病院だけでなく刑務所にも足を運び、男を殺し絞首刑が決まっていたフィルダスという女性に出会う。自分の人生について語るフィルダスの話に心を打たれ、この小説を書こうと思い立った。フィルダスの人生は読者である女性の、男性の心をうち、人生と闘う勇気、生きる勇気を与えてくれる。私は本書で彼女を最初に日本に紹介し、1995年に来日も実現できた。(1987年出版)