インドの社会と名誉殺人
柘植書房新社
鳥居 千代香 訳
名誉殺人とは、親が決めた相手との結婚を拒むことや、夫以外の男性と恋愛した女性やその相手の男性が「名誉を汚した」と家族や部族の名誉を守るため家族や部族の長老の決定で殺害される私的制裁のことである。マノジとバブリーは村から駆落ちをして結婚したが、バブリーの兄や親族に2007年に殺害された北インドで実際に起った名誉殺人を扱ったものである。このような殺人はインドで多く起っていたが犯罪者が有罪になったことは一度もなかった。しかしこの事件から2年あまりの早さで判決が下され、しかも、有罪判決だった。名誉殺人の問題を考えるときに、本書はそうした意味でも貴重である。原著者チャンダー・スータ・ドグラ(Chander Suta Dogra)は北インドを取材しているジャーナリスト。広範囲に旅をし、身を危険にさらすことも多いという。(2015年出版)